第二章

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 レイとミオは会議室を後にした。二人が生きていることを知っているのは、おそらくわずかな人間であろう。姿を見られないようにする必要がある。エレベーターは使えないので、非常階段を使って階下へ降りた。会議室は非常階段のすぐ近くにある。この部屋を二人の待機場所にしたのも、ブラント部長の計算であろう。  建物を出た二人は、辺りを注意しながら、格納庫へ向かった。ジェットモービルは、この格納庫に駐機してある。ジェットモービルには、一機ごとに識別番号が割り振られている。レイとミオはIDカードで中に入ると、袋に入っていたキーに記載されている番号を元にして、目的のジェットモービルを探した。  「ジェットモービルは何とかなるとして、格納庫の扉はどうする? 許可がないと、開けられないんでしょ。外に出られないじゃない」ミオが心配そうに言った。  「いざとなれば、ぶち破るか」  「まあ、荒っぽいわね」  「どうせ私たちは死んだことになってるんだ。何だってできるさ」  やがて二人は、目的のジェットモービルの所まで来た。ふと見ると、一人の青年がよりかかって居眠りをしていた。ジェットモービルの整備を担当している男だ。  「こんな所で何をしている」レイが言った。青年は目をさましたが、二人には気づかないふりをしているようだった。  「ああ、よく寝たな」  「何をしていると聞いているんだ」  青年は二人に背中を向けたまま小声で言った。  「いいか。俺はあんたたちと会話をしちゃいけないことになっている。下手をすれば、俺もクビになっちまう。頼むから、一切返事をせずに、俺の独り言を聞いてくれ。いいな」  レイは、指先で二回ジェットモービルの壁を小突いた。OKという合図だ。それを確認した青年は、文字通り独り言を言った。  「さてと、そろそろ仕事にかかるか。そういえば、扉の開閉チェックをするように言われてたな。たしか、扉を開けて、5分間そのままにしておくんだったな」青年はそのまま制御室に向かった。レイとミオはあわててジェットモービルに乗り込んだ。  「部長もずいぶんと用意周到だな」  「あなたに扉を壊されたくなかったんじゃないの?」  「何とでも言え」  レイはエンジンをかけると、ジェットモービルを動かした。それに合わせたかのように、格納庫の扉が開いた。二人を乗せたジェットモービルは、そのまま外へ飛び出した。
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