「出逢いと始まり」

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「出逢いと始まり」

目が覚めると、一面に真っ青な空が広がっていた。 「なんじゃ…こりゃ…」 どんな晴天よりも透き通ったスカイブルーに、俺は思わず声を漏らす。 ゆっくり立ち上がると、空の色をそのまま映した足元に水紋が広がり、優しい風が頬を撫でた。 「何もない…」 文字通り何もない、ただひたすら床と空が続く空間に呆気にとられていると、遠くの方で何やら赤い点が見えた。 「あれは…神社?」 よく目を凝らしてみると、赤い点は大きな鳥居であることがわかった。 ここにいたって仕方なさそうなので、取り敢えず、俺はその御社を目指して歩き始めた。 道中、俺は曖昧になった自身の記憶を手繰り寄せた。 「俺…なんでここにいるんだろ…」 たしか、訳もなく雨の中を歩いていて、何か凄い衝撃が上から来たと思ったら… 「ひょっとして…俺、死んだのか?」 大木をそのまま使ったような巨大な鳥居の前でそう呟くと 「ああ、お前は死んだ。雷に打たれてな」 と、前方で声が響いた。 その声は幼さの残るものの、凛としてとても聞き取りやすい。 「雷………」 ーー神が与えたもうた天罰に思える閃光と、地面が割れてしまいそうなくらいの大きな音。 欠けていたパズルのピースが少しずつ埋まっていくように、ここにくる直前の出来事が次々に浮かび上がってくる。 「そうだ…俺、雷に打たれて……え?」 そこでようやく声に気づき、顔を上げると言葉を失った。 そこにいたのは、長い黒髪の、世にも美しい少女だった。 だがよく見ると、その頭からはケモノミミが生え、彼女の背中あたりでは黒くて艶のある尻尾がふさふさと動いている。 「気づくの遅くないか?」と少女は呆れたように言うが、かつてない程の困惑に見舞われた俺の思考は、完全に停止してしまった。 「お…俺、たしかに死んだはずじゃ…」 慌てて全身を確認するように見るが、全くなんの問題も無い。 むしろ調子が良いくらいだ。 「どうした狐につままれたような顔だが?」 少女は口元に笑みを滲ませて言う。 「いやいやいや!なんで俺生きてんの!?」 "なんで"と"どうして"が複雑奇怪にからまり合い、吐き気を催すほど目が回る。
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