サラメンコの日常百鬼夜行

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サラメンコの日常百鬼夜行

春はあけぼの。ようよう白く。 まだうすら寒い三月の暮れの朝。 サラブレッドのサラメンコは牧場を駆け回り一汗かいていた。 サラブレッドと生まれたからには誰より早く走りたい。 だからこそ鍛練は怠らない。 朝日が完全に山影から顔を出したとき、ゆっくりと厩舎に向かう。 「ミズキンダー。まだ寝てるのー?」 相方の姿を探しながら、厩舎を歩くと視界に赤いものが目に入る。 「え?血?」 ゆっくりと近寄るサラメンコ。 近付いて驚愕する。 「ハムハムーー!?」 赤い水溜まりの真ん中にアサカハムハムが浮かんでいる。 「何!?これ!?ミステリー始まるのーー!?」 ワクワクが止まらないサラメンコ。 「違うよ」 後ろからいきなり声をかけられてサラメンコは、びくんと飛び退く。 「み、ミズキンダ!?」 「私がトマトジュースこぼしただけだから、ハムハムが雑巾で拭いているだけだから」 ようくアサカハムハムの様子を見ると愛用の特注ハムスター用雑巾でせっせと拭いている。 「ちっ。なんだよ。ミステリーかホラーかと思ったのに」 「あぁ。いいんじゃない?トマトジュースで百鬼夜行やって、みんな驚かせようか」 悪企みのミズキンダとサラメンコ。 「ちょっと!雑巾足りないよ!」 アサカハムハムの声が響く。 「このトマトジュース、拭いても拭いても終わらないよ~」 そのおかしさはミズキンダとサラメンコは気付かなかったとさ。 おしまい
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