隣のイケメンに〇〇◯を拾われました。

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「あの。実は私も昨日飛ばしてしまったんですけど……」 「……ええと……これ、ですよね」  差し出された小さな紙袋に、気が遠くなりそうになる。 「す、すすすす、すみません、お見苦しいものを――」 「い、いえいえ、おあいこですし! 気にしないで下さい、僕も気にしないんで!」  彼は恥ずかしそうに拾得物を背に回し、それでは失礼しました、と家の中に入っていく。  昨日から張りつめていた心がどんどん溶けていくのがわかった。不安、羞恥の代わりに安堵が広がっていく。  ああ、これでまた何事もなく日々を過ごしていくことが出来る。もちろん引っ越す必要もなさそうで。  そう思って星空を見上げた私は、風で吹き上がった髪が彼の部屋の方に流れていくのを見て、ハッとした。 「あ、れ?」  今日の風は東から吹いている。そして彼の部屋は風下の西。  その事実に気がついて、私は胸の中に温かな感情が広がっていくのを感じた。  明日の朝。もし会えたらちゃんと目を見てお礼を言おう。拾得物を届けてくれたこと。そして気遣いにも。  風が柔らかく髪をなでていく。 「ほんと……なんてもの、飛ばしてくれるわけ」  風が飛ばしたものはひどかった。けれど、素敵なものを一緒に運んできてくれたのかもしれない。  そんな気がしてしかたがなかった。
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