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「俺は高校入学と同時にギターを始めて、これまで練習してきた。高校の卒業式の日に、みんなの前で弾き語りをしてみたいとずっと思ってた」
彼の言葉に、教室中が沸き立ち盛り上がる。特に女子の声援は半端なものではない。そんな声援の中、彼は教壇に向かう。気を利かせた男子が、教卓を隅の方に移動して、教壇に椅子を一つセットする。
そこから、彼の自作曲によるライブが始まった。ノリの良いアップテンポの曲もあれば、心に染みるようなゆったりとしたバラード調の曲もある。彼のギターと歌の技術が高いことはさることながら、そりの曲を全て自作したということには驚かざるを得ない。
しかも、彼の作った曲は、これまで三年間にあったイベントの思い出を歌詞にしたものだった。彼の歌に、様々な思い出が蘇ったクラスメイトの中には、涙を流している人もいる。私も思わず泣きそうになるけれど、グッと涙を堪えた。ここで泣いてしまったら、彼への想いが溢れて、涙が止まらなくなるような気がした。そんな姿は、誰にも見られたくない。
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