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「そうそう。あのときは、猫にサンドイッチ分けてやってくれてありがとう」
その言葉に、私は慌てる。
「あれは本当は違うのよ」
「何が違うの?」
「本当は、サンドイッチを落としただけで、あげたわけじゃなくて……」
すると、彼は少しだけ間を置いてから、
「知ってるよ。見てたから」
「えっ!? 知ってたの?」
「うん。でも君は猫を追い払わずに、そのまま見守ってやってただろう? それって分けてあげたのと一緒だし」
「そういうものかな?」
「そういうもんだよ。だけど、翌日、入学式で君を見たときはびっくりしたよ」
「私もびっくりした」
その言葉に、お互い顔を見合わせて、思わず笑った。
「でもね、あの公園で君を初めて見たとき、正直言って可愛いと思った」
ようやく落ち着き始めていた鼓動が、その言葉で再び高鳴り始める。自分でも顔が真っ赤になるのがわかる。私は両手で顔を覆った。
「顔、隠さないでよ」
彼の声に、私はゆっくりと手を外す。
「もう。変なこと言って揶揄わないでよ。本気にしちゃうでしょ?」
「本気に……してくれていいよ」
「えっ!?」
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