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まぶしい光がぼくを包み込んだ。びっくりして目を閉じたら、風の音しか聞こえなかったぼくの耳にたくさんの人の声が一気に聞こえてきた。
恐る恐る目を開けると、そこは路地裏だった。ぼくが来たかったサイゴの町だ。王都から一番遠い人間の町。ここから先は瘴気で人が住めなくなってしまった。動物も、植物さえ生きることができない。
そんな場所でぼくは生まれたの?
「ん? おまえ一人か?」
黒い髪に薄茶色の目。服はボロボロであっちこっち破れて血がにじんでいる。ちょっと、焦げ臭い臭いがした人間の雄がぼくを見下ろしている。
「こら、ピース! お前なに勝手に出歩いてんだ! 怪我人は大人しくしてろ!」
ピース? どこかで聞いた名前だ。どこで聞いたのかな?
「ん。……なあ、アンネイこいつ飼っていい?」
「はあっ!?」
え、ぼくを、飼うの? 思わず声を上げたら、ガラスのコップを力を入れて擦った時みたいな高い鳴き声がぼくの口からこぼれ落ちた。それで、また驚いて短く鳴いた。
「ほら、こいつも一緒に連れていってくれってさ!」
「絶対言ってないと思うけど……」
試しにもう一回鳴いてみた。……ぼくは、こういう声をしているのか。
きゅーい、きゅーい、きゅきゅう。
ついでに手足も動かしてみる。すごく、指が短い。これじゃなにも掴めない。
ぼくが自分の身体確認をしてると、突然体を抱えあげられた。
顔をあげてみると、目の前にさっきとは違う人間がいた。
金髪碧眼で、人間には見えるけど、男か女かわからない。顔が包帯でぐるぐる巻きになっている。声もくぐもっていてそっちでもわからない。
「ど・う・す・る~、テ・イ・ムする~?」
「……っ!?」
ぎゅっと目の前の人間の胸に押し付けられた。……女の子だった。
「もう、邪龍は居ないんだ。俺たち普通に生きられるんだぜ? 使命とか、神託とか、煩わしいもん一つも無くなって、精々残った仕事なんて結果報告に城に行くだけだ。だったらさ、ペットの一匹くらいいたってよくないか?」
「……誰が面倒見るんだよ! モンスターで大人しいとは言っても、エサは? 戦闘中はどうするつもりだ!」
「そこは適材適所! な、セーフティ!」
「あ、はい? ピース様、アンネイ様、このような場所で何をなさっているのですか?」
いつの間にか他の人間が増えていたみたいだ。ぼくはまた軽々と持ち上げられ、すごくイヤな臭いの方に押し付けられた。
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