グルメな悪魔のひと工夫

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 そう、美しい女だ。大学のミスコンで優勝した。俺は――。 「まあ、仕方ないよな。あれだけのいい女なんだから」と、悪魔が言った。  妹を……襲ったことがあった。高校生の時だ。未遂に終わったが。 「結局、あんな男の物になったわけだ」と、悪魔が言った。  妹は半年前に結婚した。同じ会社の同期のごく平凡な男――凡百の間抜けと。  悪魔は血溜まりの中から包丁を拾って俺に手渡し、言った。「行くか」  俺はうなずくと、両親の寝室を後にして妹夫婦の住む家に向かった。  ◆◆◆  1時間後、悪魔は妹とその夫を殺した男の魂を、今度こそ本当に引きずり出した。  男は魂のみの存在となり、悪魔の胃の中でゆっくりと溶かされ、永劫(えいごう)の苦しみを味わうことになる。 「ほんのひと工夫でいい味になった。たっぷりと(けが)れた魂は、やはり格別よな」  悪魔は満足そうに、ぽんぽんと腹を叩いた。    了
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