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君となら
あの事件から4ヶ月ほど経ち、年が変わった。
厳しい寒さが、手をかじかませる。
しばらく経っても、俺は特に罪悪感に襲われることはなかった。
俺の犯行がバレる気配もなかった。
安心して寝られる夜の、気持ち良さったらない。
俺はてっきり、アキと交際をしているつもりだった。
しかし、アキラを埋めた日からしばらく、やたらそっけない返事が続き、挙句、最近全く連絡が取れない。
あの日を思い出し、不安になって家へ出向いた。
「あぁ…ネコちゃん…どうしたの?」
「連絡取れなくなったから、不安になったんだ。大丈夫か?」
「…その…苦しくない?」
あれ以降、悪夢ばかり見る。
毎日魘されて、目がさめるとどっと疲れている。
「怖がる必要は無いんだよ。奴はもう死んだんだ」
そういうことじゃない。
自分が、罪を犯したことを隠して生きていくのが怖いの。
「どうして?そもそも、殺してと言ったのはアキだ」
…分かってる。
でも私は弱いから…罪悪感が拭いきれないの。
あなたと話していると…大坂を殺したことを思い出して、苦しいの。
あなたは、苦しくないの?
「俺は…大丈夫だよ。アキの笑顔が見れるんだから」
そう…
そう…?
なんだ、そのそっけない返事は。
私は、ネコちゃんのこと好きだけど…もう会えない。ネコちゃんと会うことが、接することが…あのことを思い出すきっかけになってしまっている。
「つまり、会いたくないって?」
「うん。ごめんね────」
それが君の答えか。
君のために死ぬ思いをし、1人の殺人鬼を殺した俺が、また心配して君の元に訪れても、会いたくないってか。
全く、身勝手な女だ。
「────もうあなたに…会いたくない」
腹の底から蘇ってくる、懐かしい感覚。
「さよなら。もう、連絡して来ないで」
「そんなこと言われるとは思わなかった」
「私だって辛いの。あなたも、私のことが好きでしょう?なら私が望んだようにして欲しい」
「…会いたくねぇんだよな」
「ごめんね」
「分かった。君が好きだから、君の頼みを聞くよ」
俺は、静かに池畑 あきなの首に手をかけた────
君が好きだから。
だから頼みを聞いてあげよう。
静かになったアキの横で、俺は真っ赤な愛を垂れ流し、いつまでも彼女を抱いていた。
────END────
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