溺愛

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「私は……大坂が“死んでくれれば”、それで良い」 「……し、死んでくれれば…!?おい、それって!!」 「“お願いね”。別れて分かったんだ。私は、ネコちゃんのこと、まだ好きだったんだって。私好きだよ。ネコちゃん」 …何言ってくれてんだよ…。俺らでヤツを“殺す”…?そんなこと…。 果たして、出来ないだろうか。 『私好きだよ。ネコちゃん』 急に、アキラが憎くて憎くてしょうがなく感じた。 …元カレがどんな男だったかは知らないが…少なくともアキが惚れた男を殺したんだよな…。 「ネコちゃん、大坂を殺さなきゃいけない理由がもう一つある」 「というと?」 「私がネコちゃんと付き合う前に付き合ってた、いっこ下の子、覚えてる?」 「名前は知らないけど、覚えてる。けど…おい、もしかして!!」 「知ってるでしょ、少し前、死んだ。同じような風にね。自殺ってことで方付けられた」 「…。おい、まさか、そんな」 「このままだと…次はネコちゃんだよ。ネコちゃんには死んでほしくないの!!!」 「やられる前に、やるってことかよ」 「死にたくないでしょ」 「…それに、アキを守らなくちゃいけないしな」 「…ネコちゃん」 「殺すか。君のために殺すよ、俺は。」 …君となら、殺せる。 君が好きだから…。 翌日から、とにかくSNS上にアキラが存在しないかことごとく探し回った。 しかし、流石に間抜けではない。 以前まであったアカウントも、何もかも消え去っていた。 考えてみれば、アキラは頭脳的にはアキと肩を並べるレベルを持っていた。 そんな生半可な事では見つけられそうもない。 「SNS以外の手段を考えなければな。何もかも残ってない」 「そんな簡単には見つけられないよね…。」 「理由があって消してるんだろうな。…殺そうとしてるから、下手に人に聞けないし、なかなか厳しいね」 「ごめんね。せっかくの夏休み」 「大丈夫。部活があるだけだよ」 ネット上で探し出せないのであれば、直接見つけるしかない。 まずは、家を探すのが手っ取り速い。 中学時代の学区なんざたかが知れてる。 この人口の多い町田でも、いくらでも探せる方法はある。 引っ越していなければ、一戸建てに住んでいたことは確かだ。 それにそこまで多くない苗字。 大坂という表札を手あたり次第探した。 しかし、しらみつぶしに探しても、大坂の名は出てこない。 数日の捜索は徒労に終わった。
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