歪み

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歪み

俺があきなに惚れたのは、理屈ではなく、直感だった。 中学で一目見た時、この女が良いと思った。 中二で同じクラスになり、ようやく接点が出来たと思った頃、こいつもまた同じクラスである、金子と付き合っている事を知った。 金子が憎くてしょうがなかった。 どうしてあの何もかも完璧な美女が、対して頭も良く無い、ごく普通の男に魅かれてるのだろうか。 あきなとの接点を持ちたくて、とにかく勉学に励んだ。 高校は同じ所に志願したが、俺を避けたのか、あきなが志願変更をして、結局別の高校となった。 高校に入って、疎遠になりそうで、毎日のように連絡を取っていた。 だんだんとその返事は適当になって行き、とうとうメッセージを見ることすらされなくなった。 SNSでも、全てブロックされ、あきなを知れる物が無くなってしまった。 毎日のように、あきなを知る人間のSNSを徘徊する。 ある時、あきなに彼氏が出来た事を知った。 金子と別れた事への喜びと、再び届かぬ所にいるという事実への憤りを感じ、より深くあきなを知ろうとした。 そういえば、金子と付き合う前、中学一年のと一瞬付き合っていたよな。 本当に一瞬で別れた。 名前は忘れたが、顔と、家が近かったことは覚えている。 あきなの気持ちを弄ぶ、そいつも憎い。 あきなは、前住んでいた家から近くへ引っ越した。 家の場所が分からなくなった。 ほぼ同時期、母親が男と同棲することになり、俺も遠くへ引っ越した。 地元で偶然見ることも、無くなったようだ。 しかしながら、母親の新しい男は俺を受け入れず、半精神病で男に捨てられる事を恐れた母親は、俺を捨てた。 転校した高校も、ものの一週間でやめてやった。 俺は迷わず地元に戻った。 親なんてどうでもいい。 ただ、あきな。 あの女が手に入れば、それで良い。 再びSNSの徘徊はエスカレートした。 すると、あきなの友達とあきなのSNS上の会話を見つけた。 あきなは鍵をかけていて、見ることができないが、その友達の返信は見れる。 どうやら、彼氏と別れたようだった。 胸が高揚した。 俺は、その友達から、次に次にSNSを徘徊し、あきなの元彼氏を特定した。 なんでも、浮気して別れたらしい。 クズだ。 クソ男だ。 憎い。 今まで感じたことのない憤りを抑えきれず、ふと冷静になった時、頭に残ったのは殺意だった。 あきなを悲しませた男は、理由なんて関係なく死ねば良いんだ。 死ねば良いのさ。 勝手に死なないなら、俺が殺してやるよ。 俺はあきなのバイト先へ向かい、遠回しに報告してやった。 『君を苦しめるなんて、ひどい男だ。そいつも苦しめばいいのにな』 あきなのことが好きだから。 元カレ全員、殺してやるよ。
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