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春風が恋を歌い、愛を奏でる
春の麗らかな日和。
絶好の昼寝日和。
校舎から予鈴が聞こえる中、人目につかない秘密の場所でベンチに仰向けで眠る。
少々背中が痛いが、中々の寝心地。
ここは先生も見回りに来ない。サボるには絶好のポイントだ。
だが、俺の聖域はあっさりと破られる。
「あー。こんな所に居た。顔に本を被って昼寝なんて、マンガじゃないんだから」
聞き慣れた声。
「桃子さん、ここには誰も居ませんよ。特に貴女の昔からの知り合いなど」
宮屋敷桃子に見つかり、しかし特に慌てもせず、一応誤魔化そうと試みる。
「秀一郎さん、一応隠れる素振りくらいしたらどうですか」
呆れるでもなく、ごく自然と返事をする桃子。
「こんな場所があったなんて知らなかったなぁ。一年居ても知らないことってあるもんだね」
授業の予鈴が鳴った後なのに、教室に戻らない俺を咎めるでもなく、近寄ってくる気配。
「桃子、俺の昼寝を邪魔しに来たのか」
俺の問いかけに、くすりと笑う気配がする。
「ふふっ、なんとなくこの辺に居そうな気がして」
まるで質問の答えになっていない。まあいつものことか。
「なんとなく、で見つけられるのか」
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