夢に絡まる蜂蜜

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小鳥の囀り何て少女漫画特有の優しい目覚めは無く、不吉にも忙しい鴉の鳴き声が目覚ましとなった。重たい瞼をゆったりと上げ気分屋な風に吹かれひらりひらりとカーテンは陽を部屋に差し込み其れを視姦する様に見つめるも直ぐ様飽きた様に身体を起し数秒程ぼうっと壁を見つめる。 朝は苦手ではあるが起きないと言う選択肢を取る事は無い、きっとそろそろ幼馴染である 銅藍 渉( どうらん わたる )が自分を起こしに来るだろう、何て適当ではあるが正確な( 筈 )推測を頭の片隅に追いやり大きく伸びをすると共に睡魔を逃がそうと出る欠伸を噛み殺し冷たい床へと足を下ろす、春と言えど肌寒い季節に変わりは無く床は自分を責める様に冷たかった。 「……変な夢、だったな。」 ぽつりと零した言葉は木霊す事も無く誰にも拾われず密かに散っていく、勿論聞かれていない方が好都合なのだが、独り言の多い男だなんて思われたくはない。 コンコン、コンコン テンポ良く扉を四回ノックする音が聞こえそっと口角が歪む様に上がる、寝起き故に身体は重く後数分は動きたくなかったのだが相手が彼ならそんな時間さえ鬱陶しく感じる、そっと腰を上げベットが悲鳴を上げる様に軋むのを感じながら足を扉の方へと動かし取手に手を掛け掌に軽く力を込めれば寸なりと開いた。 「あっ…………おはようございます、昴さん……」 声を零すなりまんまるい飴玉の様な双眸を煌かせそっと此方を見上げる渉に思わず笑みが綻ぶ。 魅力的で、理想的で、完璧で、愛おしい。 かわいいかわいい 俺の 御 人 形 さん。
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