喫煙室と中庭

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 東矢が思い出したように言う。 「お前、家を出たんだったな」 「それがなんだよ」  睨む俺に東矢はニッと笑った。 「ハニートラップとか、ありだなと思ってさ」 「は!?」  怒りで言葉が続かねぇ。 「いい駒を用意してやるよ」 「なに言ってんだ、お前!」  とんでもねぇ、コイツ!  思い返せば、ひよとの仲が最初にギクシャクした時の原因は、お前じゃねぇか!  東矢の野郎は、俺が一声怒鳴ろうと口を開けたほんの一瞬の隙に、喫煙室から出て行った。  ひらひらっと手を一振りして。  逃げやがった。 「くっそっ!」
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