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梅雨が明け照りつける日差しに夏の到来を否が応にもつきつけられる、そんな七月の日曜日。
「チョ~久しぶり」
「元気してたぁ」
繁華街で待ち合わせをしていたかおりとさやかは三ヵ月ぶりの再会を手放しで喜びあった。小学生以来の親友である二人だったが、中学を卒業してから別々の高校へ通っているため今日まで中々会う機会を作ることができなかった。
「どう、聖歌は?」
二人は互いの近況報告がてらその辺を歩くことにした。かおりが高校の印象を訊ねるとさやかは渋いようなおどけているような体で答える。
「う~ん。ぼちぼちかな」
「そっかぁ。聖歌はお嬢様学校だもんねぇ」
さやかの通う聖歌女子大学付属高校はミッション系の私立高校で特に校則が厳しいと有名な学校だった。一方かおりは近所にある都立高校に通っている。彼女の家は母子家庭で私立に行けるほどの経済力はなかった。
「かおりの方はどうなの?」
「うちはちょっと期待外れかな。部活にでも入ろうと思ったんだけどどこの部もなんか決定力に欠けてさぁ。結局帰宅部ぅみたいなぁ」
「ふぅん。カッコイイ先輩とかいなかったのぉ?」
さやかがニヤニヤして訊いた。
「いないいない。芋、茄子、南瓜ばっか。てか、それが一番決定打?」
「でも、男子いるだけましよ。女子校なんてさぁ、女ばっかで厳しいじゃん? ほんとやんなっちゃう」
「先生とかは? 男の先生はいるんでしょ?」
「足くさそうなのばっかし」
「アハハハァ、マジでぇ」
互いに通う高校の不満を口にしさやかとかおりは二人して大笑する。この時期、高校でも友達はできていても、まだまだ気が置けないとなるまでにはいたらない。その点昔からの気が合った友達との会話はなによりもストレス発散になる。違う高校に通い別々の道を歩むことになっても二人の友情は変わらずそこにあった。
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