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「わからない、自分が。友達だったはずなのに。あの子のこと好きだったはずなのに」
「結花」
「ごめんね、お父さん。でも自分のことは自分で決着つけるから」
「待てーー行くな--」
「はっ」
佐渡は飛び起きるように目覚めた。
「はぁはぁはぁ」
全身汗だくになっている。
今日も朝からとても蒸し暑かった。
佐渡は立ち上がり、台所の蛇口をひねって水をがぶ飲みする。
「ぐぇ」
小さくげっぷしながら箪笥の上に立てておいている写真を見た。
写真には一人の女子高生が写っている。
「…………」
写真の少女はどことなくかおりと面影がダブった。
「へっ……結花、地獄で達者にやってんのかね」
苦笑混じりの佐渡の目尻に光るものが溜まった。
「…………」
昨日の事故の捜査で所轄署を訪れた佐渡はテ―ブルの上に並べられた田中さおりの遺留品の数々と睨めっこをしていた。
その中の一つ、ビニ―ル袋に入ったペンダントを手に取る。
羽を象ったペンダントだ。
「警部、田中さやかの検死結果がでました」
丸川がやってきて佐渡に告げる。
「それで?」
「はい。死因は脳挫傷、あるいは出血多量によるショック死。薬物各種の結果も陰性だったようです。やはり、事故死が有力ですね」
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