プロローグ

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それは31歳の誕生日の出来事。私は婚活パーティに赴いていた。 「山田華さんか、テンプレみたいな名前だね、趣味は…ゲーム?へえ、その年でゲームねえ?」 「……あの、僕もゲーム好きなんですよ。何が好きですか?やっぱ一般人向けのGGとかモンクエとか辺りですか?…乙女ゲーム?あ、ハイ。なるほど。」 「てか女って皆年収しか見てないよな?専業主婦狙い見え見えだし引くわー」 (全然、だめだった。) ひと皿も取れなかったし取られもしなかった回転寿司形式のお見合いの後、増えたのは同じ境遇の女友達だけだった。会場を皆で固まって後にし、駅へ向けて歩を進める。 「全然いい人いませんでしたね」 「ね!あーあ、折角半日つぶしたのに成果なしかー」 示し合わせたかのように似せた巻き髪、花柄ワンピース、ピンクのジェルネイルの女たちが、口々にぼやく。こうして皮肉っぽく観察してはしまうけれど、私もその一人だ。同じ装備を身にまとった彼女たちと話せるこの時間は、本音で話せる憩いの時間でもあった。 「次こそいい人と出会えるといいですね、それじゃあ私はここで」 手を振る彼女たちと駅前で別れ、重い足取りで改札を抜ける。     
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