プロローグ

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以前までは乙女ゲームをゲーム機で遊ぶことが日課だったが、今はスマホのアプリで遊ぶことが日課になっている。久しぶりにゲーム機でやりたいな、とは思いつつも、スマホの手軽さには勝てない。 慣れた手つきで『プリンス☆ファンタジー』のアプリを操作する。音声を確認し、少し待つと、華やかな演出の後にいわゆる『推し』のお祝いの声が聞こえた。 「ハナ、誕生日おめでとう。おまえに会えてからオレの世界は変わった。」 「…っ、くーっ、だいすきいいい!」 もう、誰に何て言われたっていい。いい年して乙女ゲームして何が悪い。体がしびれるような幸せを噛みしめてじたばたする。乙女ゲーム最高。時人くん最高。この時よ永遠に続け。 ごろごろと布団にくるまりながらアプリで遊んでいると、だんだんと瞼が重くなってきた。流石になけなしの理性が訴えかけてくる。こんな状態で寝てはいけない、電気つけっぱなしだし、お風呂もまだ、せめてメイクはとらなきゃ。戒める言葉はいくつも浮かんで消えていく。最後の力で電気を消した私は、右手にスマホを握りしめたまま眠りへと落ちて行った。 意識を手放す寸前、「人数限定!王子さまの人生プロデュース企画」という妙なイベントバナーをタップした気がしたが、記憶が定かではない。 数瞬後、クローゼットから白く眩い光が放たれ、部屋全体を包み込んだことを、眠りこけた私は知る由もなかった。
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