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だが不思議と見覚えはある。これは婚活パーティで使われていた立食形式のお洒落バルだ。けれど大きく違うのは床。真っ白な床は踏みつけると、ぐに、と大きく沈み込む。まるで大きなマシュマロ、あるいは子どもの頃に夢見た雲の上に立っているような心地がした。
そうか、これは夢だ。
《言っておくが、これは夢ではない。そなたの罪を裁く儀式である》
瞬間、頭に声が響いてきた。脳に直接言葉をぶつけられているような感覚がとても不快だ。なぜ心を読まれているのか、そもそも誰が、と疑問を抱えて周囲を見回す。
先程の赤髪の男もきょとんとしているし、他にも4人の男性…1人は女性か、がいたが、いずれも声の主ではなさそうだ。
《他の者達も聞け。哀れな傀儡たちよ。》
「なんだ?この声…」
「頭に響いて気持ち悪いよおー」
今度は場の全員に向けて声が発せられる。
《お前たちは人間に作られし創造の世界の住人。そして人間を愛すよう宿命づけられし者達。これまでよく使命を果たしてきた。》
「何言ってんだ…?使命?」
赤髪の男が聞き返すも、返答はなく、今度は私に矛先が向いた。
《それが人間と来たら。彼らの愛を貪ったかと思えばすぐに飽きて別のものに移り、捨て、果ては忘れ去る。》
「待って、何のこと言ってるの?私はこの人たちのことなんて」
「知らねーってか。」
知らない、と言いかけたのを遮られ、ふっと何かが頭をよぎった。赤髪で金の瞳、王子みたいなきらびやかな装束、そして不遜な物言い。
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