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遠い人
壮と別れてもう、一年半が経つ
安否確認だとか言って半年に一度くらい電話をしていた
我ながら未練がましい
かけると壮も近況なんか話して時間はすぐに過ぎた
一応、自制心が働いていたのか平静を装いたいのか
切るのに、じゃあねって言うのは私の方だった
その日も半年ぶりくらいだったと思う
かけたくなってかけてしまった
もしもし、ヒロミです
久しぶり・・・
えっ?
と、壮が言った
えっ?と壮が言ったとき
瞬時にいつもと違うと思った
壮は結婚したんだ
とすぐにわかった
もしかして結婚したの?
・・・うん
達也やえみちゃんにヒロミに伝えてくれと頼んだんだけど
聞いてなかった
ごめんね
切るよ
ちょっと待って
会って話すよ
明日7時半に駅にいて
会社から急いで帰るよ
うん・・・
遅れないでね
なんて、言ったこともない言葉を言っていた
翌日の会社が終わったあとロータリーにいたら壮が来た
久しぶりに車の助手席へ座った
こんなの奥さんはイヤだろうな
なんて思いながら
お互い挨拶くらいはしたと思う
車は江ノ島方面へ走り出したようだけど私も壮も一言もしゃべらない
江ノ島に着いても降りるでもなく、壮はぐるぐる走っていた
それからまた 地元へ戻って来てしまった
気がつくと10時になっていた
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