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もう、帰らないと叱られるだろ
・・・うん
家の近くまで来て車を止めた
私たちなんで別れたんだっけ?と、初めて声に出した
おれが悪かったんだょ
えっ?なんだっけ
おれだけが悪かったんだ
おまえのせいじゃないよ
本当に思い出せないの
涙が出そうになるのを我慢していた
でも、もう奥さんがいるんだから幸せになってね
最後に握手しよ
強がりだった
私が壮に向かって手を出して初めて顔をあげたら
壮は涙を流していた
なに、泣いてんの
幸せになってね
そっと握手をした
別れていたんだから結婚しても何も悪くない
私は、この人が本当にもう、手が届かない遠い人になってしまったんだなと静かに受け止めていた
悲しみの波が押し寄せる
どこかでまた、私の所に戻ってきてくれるんじゃないかと思っていたのかもしれない
バカだね
多分、最後になる
何も語らずただ隣にいて同じ時間を過ごしただけで
すべてがわかる気がした
あの、過ごし方が正解だったと今でも思っている
好きだったんじゃなくて愛していたんだとわかる時間だった
もう、それに気づくには遅すぎたけど
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