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 青年は、独りバスを降りた。  途端に、吐いた息が白く凍る。  重低音とともに走り去るバスを見送って、彼は凍てつく息をもう一つついた。  バス停の傍らに佇み、彼は眼鏡の奥の醒めた目で辺りをゆっくりと見回す。  今、目の前に横たわるのは、雪に覆われ、舗装されているのかいないのかさえ判然としない、一本の道路。  その上に、バスが深々と掘った轍の跡が、どこまでも続いている。  そんな路傍にぽつんと据えられたのは、銹びついた無人のバス停と、古びた木のベンチだ。  雪深い車道の両側には木々が生い茂り、その梢にも白い雪が被さっている。   彼はベンチの雪を少しだけ払いのけ、荷物をペンキの剥げたベンチの上に置いた。  薄汚れたジャンパ-に両手を無雑作に突っ込んで、彼は空を仰ぐ。    天窮見渡す限り、鉛色の重い雲に覆われている。  陽の光は、とても下界まで届かない。  小さなため息を凍らせて、彼は眼鏡を押し上げた。  そしてコンパクトな荷物を下げて、すぐ近くの木々のとぎれる細い坂道へと踏み入った。  さくさくという独特の音を立てる、彼の足。  靴の裏には、べったりと白い雪がまとわりつく。     
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