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ぼくはえりちゃんが大好き。
はじめて出会った時のえりちゃんは、らんぼうですごく強引でちょっぴり苦手だったけど……。
えりちゃんはいつだって、どこへだってぼくをいっしょに連れて行ってくれた。
うれしい時もたのしい時も、かなしい時だっておこった時だって……ぼくたちはいつもいっしょだった。
コロコロと表情がかわるえりちゃん、ぼくはそんなえりちゃんがたまらなく大好きになったんだ。
大好きだよ、ぼくたちはずっといっしょ!
ずっといっしょだって思ってたのに……。
大きくなっていくえりちゃんの周りにはどんどん新しいお友達が増えて、ぼくはいつの間にか隅っこのほう……。
…………ねえ、えりちゃん。ぼくはもういらない子なの?
ぼくは真っ暗なクローゼットの奥の隅からえりちゃんに問いかける。
「あ!くまごろう!懐かしい!!」
何年もたったある日、ぼくの周りが明るくなった。どうやら春から大学生になり下宿するえりちゃんが荷物の整理をしていたらしい。
「懐かしいなぁ、昔はずっと一緒だったもんな。」
えりちゃんがぼくを拾い上げ、あちこちくるくるまわしながら埃まみれの身体を軽くはたいてくれた。
それからお風呂に入れて身体を綺麗に洗い、ちょっぴり雑な干し方だったけど天日干しをしてくれた。
……乱暴なのは変わってないなぁ。
ぼくの欠けた目から溢れる綿の涙を綺麗に縫い消し、真新しい黒いキラキラしたボタンの目を付けてくれた。
「……よし!綺麗になったからお前を連れて行こう!また宜しくね、くまごろう!」
……ぼくはまた一緒にいれるの?
うれしい。
ありがとう、えりちゃん。
大好きだよ!
ぼくは届かない想いをえりちゃんの胸の中に呟いた。
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