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「何を言っているの?
私があなたにひざまずくなんてあり得ない。
でも、この件に関して、私はあなたの予言が外れる方に賭けることは出来ないわ。
百年後、2百年後も、あなたは同じように言い続ける権利があるのよ。
いつか、あの女神を、この世で最も美しい女神アルラを私の前にひざまずかせてみせる。
あなたは、そんな戯言を言うことが出来るの。
だって、私もあなたも不死身なんだもの。
でも・・・・・・、あなたはその科白を、ここに居るおぞましい輩たちの相手をしながら言うことになるんだわ。
そして、私があなたの前にひざまずく、残念だけど、そんな日は永遠に来ないのよ」
女神アルラは、堪えきれぬように笑い声を漏らした。
檻の中のイルは、鉄の棒を掴んだまま、がっくりと両ひざを着いた。
女神シャナンは、それでも、じっとアルラを見据えていた。
「あなたの方こそ、上辺だけの美しさと心の醜悪さ加減が、この冥界にとてもお似合いですね。
それに、あなたの夫も」
シャナンは、離れた位置に座っている冥界の王を、ちらりと見上げた。
王は玉座に腰を下ろしたまま、こちらを見てはいなかった。
アルラは、シャナンに近寄ると、声を潜めて話し始めた。
「あの者が私の夫?
何を言っているのかしら?
冥界に降る前、あなたに言ったわよね。
私が結婚すると言えば、王は何でも私の願いを3つ叶えてくれると。
だから、私はお願いした。
天界の女神シャナンを、私の前に連れてくるように、と。
それが1つ目の願い。
そのとおりに、あなたはここへ来た」
「でしたら2つ目は?
2つ目には何を願ったのです?」
シャナンが問うと、アルラは波打つ金色の髪を優雅にかき上げた。
「冥界の王には、まだ1つしか頼んでいない。
でも、2つ目の願いはすでに決まっているわ」
アルラは自身の胸に手を当てた。
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