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「ところで、冥界の王があなたのために叶える願いは、まだ2つ残っているのですよね?」
女神シャナンがアルラに訊ねた。
抑揚の無い、淡々とした声だった。
「ええ、そうよ。
でも、言ったでしょう。
私はあと1つ願いを叶えてもらうだけでいいって。
私は天界に戻り、あなたの父であるゼオナレスさまの心を射止める。
あなたが余計なことをしてくれたおかげで、正式な王妃にはなれないけど、彼は私の虜になる。
そうなれば、この世は思うがまま。
邪魔だったあなたは、この冥界で、おぞましき者どもの相手を永遠にし続ける」
アルラはそう言うと、おかしそうに笑った。
「シャナン、これで永遠にお別れね。
あなたともう会うことが出来ないなんて、なんだか寂しいわ」
見下すようにアルラは言った。
シャナンは一瞬の間の後、アルラを上目づかいに見た。
「ええ、私も寂しいです、とっても。
あなたのように浅はかで、張りぼての美しさに執着する女神を、もう見ることが出来ないなんて」
シャナンは静かにそう言うと、鋭い視線をアルラに向けた。
アルラは、ムッとした表情をその美しい顔に受かべた。
「まだ、そんな減らず口を叩く余裕が残っているのね。
おぞましき連中が、あなたの身体を求めて襲いかかってきても、そんな態度でいられるかしら?」
アルラは、感情を押し殺そうとしたが、その声に怒気が含まれているのは明らかだった。
2人の美しい女神の殺気だった視線が交錯した。
そのまま、広間は静まり返った。
少しの時間の後、アルラはフッと小さく笑い、口を開いた。
「でもね、私が見たいのはそんなものじゃないの。
私が本当に見たいのはね、あなたが自ら進んで、あのおぞましい者どもを誘惑し、身を任せるところよ。
だって、あなたは冥界に下り、おぞましき者どもを誘惑した淫乱な女神として、後の世に延々と語り継がれることになるんだから。
私はそれを天界や地上で伝えるために、あなたの惨めな姿を、この目で見届ける義務があるのよ」
アルラは、指で自身の大きく魅惑的な目を指差した。
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