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「サアヤはどうしてたの? あなただって、普通の人じゃないんだから」
「私はあくまでお手伝い、だからね。現場には一歩も入らなかったわよ」
「賢明ね」
「とーぜん」
鼻で笑うと、ハーブティーを飲んで一息つく。
「…まっ、夜の方ではもう女の子は行くのを本気で拒んじゃってさ。仕方ないから芸人達が頑張ってた」
「良い絵は撮れた?」
皮肉まじりに笑みを浮かべながら聞くと、サアヤも意味ありげに笑う。
「みたいね。オンエアはまだだから、何とも言えないけどさ」
それでも彼女が行こうとしなかった場所ならば、いくつか映っていても不思議じゃない。
「でも問題は全ての撮影が終わった後、旅館のことよ」
ふと真面目な顔つきになり、サアヤは遠い眼をした。
「旅館は古くてもそこそこの広さがあったから、スタッフも全員泊まったの。よくある隠し撮影も芸人の方だけにして、普通に夜を向かえたんだけど…」
女の子は、自分が泊まる部屋はイヤな感じがすると言い出し、泣き始めてしまった。
スタッフが困り果てた時、サアヤの友達がこう言い出した。
「あっ、じゃあこのコと一緒にいると良いですよ。サアヤ、幽霊とか寄り付かないタイプなので」
「なぬっ!?」
「……と言うか、あなたの周囲の人はどこまで知っているの?」
思わず呆れ顔で聞くと、肩を竦めた。
「まあよくあるコックリさんとか、一度も来たためしがないから。それにどんな心霊スポットでも、私はズンズン進めるし」
彼女が背負っているモノを怖がっているんだろうな…。
思わずわたしまで遠い目をしてしまう。
「そんで話を元に戻すと」
友達の話を聞いて、女の子はすぐにサアヤに飛びついてきたらしい。
一緒の部屋で寝てほしい、と。
「周囲の人からも頼まれちゃってさあ。…それにそのコのマネージャーから、特別にお手当付けるからとも言われちゃったし」
よっぽど困っていたんだろうな。
その光景が眼に浮かぶ。
「…でもそこで、イヤ~なことがあったの」
そう言う彼女の顔は、これ以上ないぐらいに険しい表情だった。
「何か現象が起こっちゃったの?」
「ううん。幽霊じゃなくて、人間の方」
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