11人が本棚に入れています
本棚に追加
3
騒ぎを聞き付け、旅館の女将がやって来た。
女将はスタッフから話しを聞いた後、イヤな笑みを浮かべてサアヤを見た。
「まあそちらのお嬢さんが鈍いだけかもしれませんがね。起こる時は起こってしまうことを、覚悟してくださいね?」
ああ…ブチッ★とキれちゃったんだ。
「だから言ってやったのよ!」
表情を引きつらせながら、サアヤは女将に言った。
「この旅館のウリは幽霊騒動だけだもんね。いなくなったら、さぞかし困るわよね~」
と意味ありげに笑ってやったそうだ。
「サアヤ、そういう核心めいた部分を言っちゃダメでしょう?」
咎めるように言うと、そっぽを向かれた。
「だってホントのことじゃん?」
確かに旅館は幽霊騒動をウリにして、今まで経営が保てていたんだろう。
そうじゃなきゃ、とっくに潰れていた。
だから女将は思わず自信満々に、ケンカを売ってしまったのだ。
―その相手の正体を知らずに。
「腹がたったし、私は女の子と一緒に部屋に行ったの。確かにジメ~とイヤな感じがしてたのよねぇ」
確かに、その場所には良くないモノがいたのだろう。
「女の子があんまりにも怯えるから、二つの布団をくっつけて寝たのよ。…実はその後のことは、私自身は何にも覚えていないのだけど…」
失笑しながら語るところを見ると、サアヤは覚えていなくても、他の誰かが見ていたのだろう。
「誰に、何を、見られたの?」
はっきり聞いてみると、エヘッ☆と誤魔化すように笑われた。
「そのアイドルの女の子」
「まさかっ…!」
思い当たることがあり、わたしは目と口を大きく開いた。
「アレ、を見られたの?」
「アハハ~。…実は、そう」
「あああ…」
私は頭を両手で抱えた。
アレとは、彼女が背負っている【呪いと祝福】が実体化したモノ。
ある程度の力を持ったモノにしか見えないが、女の子は見える者だった。
「後から聞いた話しなんだけどね」
サアヤは気まずそうに笑いながら、続きを語りだす。
サアヤと女の子が眠った後、時刻は深夜二時を回った。
すでに旅館の中で起きている人はいなくて、静まり返っていた。
―だが、異変は突如起こる。
最初のコメントを投稿しよう!