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女の子は緊張の糸が切れ、パタリと布団の上に倒れた。 そしてようやくサアヤが眼を開ける。 「…んっ? トイレにでも行ってたのかな?」 布団から出ていた女の子を見て、勝手にそう思ったらしい。 「でも布団もかけないで寝るなんて…。まあ今日は疲れたものね」 布団をかけ直し、サアヤは女の子の頭を撫でた。 「今日はゆっくりオヤスミ」 そしてサアヤも欠伸をして、寝直した。 ―と言うところで終われば、まだ良かったのかもしれない。 「…いや、良くないわ。って言うか、アレって自動で動くの?」 「んっと…。まあいつも制御しているワケじゃないけど、あの時、私寝惚けてたからさぁ」 睡眠を邪魔するモノを排除したいと言う気持ちが、無意識にアレを動かしてしまったらしい。 「ああいうことって結構あってさ。ついついいつもの癖で」 …無意識にアレを動かされたら、うっかり見てしまった人に、とんでもないショックを与えるだろうに…。 「それにホラ、女将にケンカ売られたでしょう? そのこともあるんだろうね」 ああ、やっぱり…。 彼女の怒りは静まらなかったか。 「んで、翌朝眼ぇ覚ましたら、何か体が重いのよ。起きたアイドルに話を聞いて納得したけどね」 「…アレが、旅館中のモノを食べ漁ったのね」 「ピンポーン♪」 サアヤは嬉しそうに拍手をして見せる。 「アレは私の願いを叶える為に存在しているからね」 『静かにしてほしい』との願いは、旅館にいたモノを全て食べ尽くすことで成就されてしまったのだろう。 「朝、起きた時には旅館はすっきりサッパリしていたの。女の子は驚いていたけど、昨夜の様子を知っているただ一人の人物だからね」 「口止めはしたんでしょうね?」 「言わない約束は、女の子の方からしてきたわよ」 元々、女の子はこういう場所に来るのを嫌がっていた。 けれど仕事なので仕方なく来ていたものの、女の子も女の子で怒りを覚えていたのだ。 「それにまあ、誰に話したところで、信じてくれないでしょう?」 サアヤが言うと、説得力あると思う。 現場のスタッフや自称霊能力者、それに旅館関係者に女将も、ソレを見ていないのだから、夢でも見ていたのだろうと思われる。
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