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トイ・プードルのチョコは、山中のけもの道を黙々と北に向かっていた。孤独なのは、カカオやココアと意見が分かれ、妥協することが出来なかったからだ。
『ボクが守ってあげたのに、カカオたちは感謝しなかった。これからもボクが守ってあげようと思ったのに……』
それがチョコの認識で不満の源だった。
ずっと歩き通しのために足は痛んだ。休息を取りたかったが、空腹がそれを許さない。早く食べ物にありつきたい。このままでは餓死してしまうと思っていた。
歩きながら食べ物を探したが、肉の匂いも穀物や果物の匂いもしなかった。大きなゴキブリを見つけて追ったが、簡単には捕まらなかった。ゴキブリたちは岩や木の根元の狭い隙間の奥深くに逃げ込んでしまう。
『ワン!』
間抜けなゴキブリが目の前を横切ろうとした。チョコはその背中に爪を立てて仕留めることができた。
『やった!』
チョコは、ゴキブリにむしゃぶりついた。初めての触感、初めての味だったが、美味しいと思った。
『でも、カカオなら、もう少しましな食べ物を見つけたかもしれない』
ゴキブリを食べながら考えた。
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