ゼロ番街

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川崎ゼロ番街の死体発見現場に向かう緊急車両の中で、二人の刑事はくつろいでいた。事件が発生したといっても、何の情報もない今から緊張していては始まらない。 自動運転の緊急車両は、やはり路肩に停まる自動運転車両を追い越して、ストレスなく走った。 運転席に座るのは30歳になったばかりの山下俊範で、助手席では猪瀬隆介が拳銃を点検していた。猪瀬は山下より7年ほど早く刑事になったベテランで、太い眉毛と頬の傷が人相を悪くしていた。 「猪瀬さんは銃が好きですね」 山下が猪瀬の銃に目をやる。 「俺は、これのために警官になったんだよ」 猪瀬は真顔で応えた。 「今日の仏は、水死ですよ。銃の出番はないと思います」 「今使うかどうかは関係ない。道具の手入れは、プロの心がけというものだ」 それは、2人の間で何度も繰り返された会話だった。山下の記憶では、猪瀬が実際に銃を使ったことは一度もない。 「川崎ゼロ番街に行くのは初めてですよ」 「俺もだ。ああいうところは嫌いだ」 猪瀬はぶっきらぼうに言った。
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