拒む者たち

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その日も食料を見つけるのは難しかった。相変わらずゴキブリはすばしっこい。道端の草木はひどく苦かった。口に入れると反射的にもどしてしまう。もどすとお腹が痛んだ。 しばらく歩くと、大きな動物の足音がした。その足音のリズムは二足歩行のものだ。 『人間だ!』 人間以外の二足歩行の動物を知らないチョコは歓喜した。 とはいえ、喜んで見ず知らずの人間に抱き着くほどチョコも馬鹿ではない。ゆっくりと足音の方向に向かった。 自由を求めて研究所を出てから、3日が過ぎた。その3日で、食料を手に入れる苦労と、野良猫や野良犬、カラスやトンビなどから身を守ることの難しさを知った。人間と暮らすことの安心感に、今は飢えていた。 『今は苦しいけれど、簡単に尻尾を振るな』チョコは自分に言い聞かせる。 『僕は自由を手に入れたんだ。人間のもとに駆けつけて、小さなガラス箱の中に入れられたり、首にリードをつけられたりするのは耐え難い屈辱だ』
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