拒む者たち

23/44
前へ
/274ページ
次へ
『カカオ。ココア。今頃どうしている。無事でいるのか?』 チョコはつぶやいた。 何故、自分は一人になったのだろう……。昨日から、同じ疑問を何度繰り返しただろうか。繰り返すたびに答えが生まれた。それは、その都度違った。 ボクは、カカオとココアに嫉妬したのに違いない。カカオにはココアがいるけれど、僕は一人だ。だから無理な提案をした。傲慢にふるまった。 プチパイは研究所に残った。僕は一人になった。プチパイは、何故、研究所に残ることを選んだのだろう? それらが、ボクが一人になった理由だった。 そこまで考えて、チョコは自分を人間のように考えていることに気がついた。ボクは一人ではなく、一匹だ。『己を良く知れ』自分自身を良く知らないと長生きできないだろう。同時に、早く信頼できる人間と出会いたいと思った。『ボクを実験に使わない人間と……』 時間が経つと食べ物の匂いが弱まった。食べ物が減っていくのが分かる。チョコの不安は反比例して増大する。 チョコの腹がグゥーと鳴った時、扉の開く音がした。 「まてー」 その声にチョコは飛び上がった。
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加