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「めんどうくさい話になりそうだ……」
猪瀬は呟く。曖昧な情報が嫌いな彼は、それ以上に曖昧な希望や不安をまき散らす政治家が嫌いだった。
「どこから流れてきたのか。それだけでも分からないか?」
「海は広いですからね」
「アメリカから流れてきたわけではないだろう」
猪瀬のところにガードマンが近づいてくる。
猪瀬はそれに気づいているが、知らないふりをした。ゼロ番街の人間が捜査に有益な情報を持ってくるはずがないと思っていた。彼らが持ってくるのは、トラブルばかりだと……。データ上、酒場で喧嘩騒ぎを起こすのは、ゼロ番街の住民が多いのも事実だった。
「あの……」
ガードマンは猪瀬に声をかけ、砂浜に第一発見者がいると指差した。猪瀬がガードマンの指すほうを見ると、子供を抱きしめて海の方向を見つめている若い女性がいた。
「こんにちは」
猪瀬と山下は、遠田のところに足を運んだ。猪瀬が遺体発見時の状況を聞き、山下が記録する。的確に情報を聞き取った猪瀬は遠田に対して、すぐに現場を立ち去るようにと言った。子供が風邪をひいては大変だとも。
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