ゼロ番街

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ゼロ番街の建築は、外貨の獲得にも一役買っている。 日本政府は、2040年からマトリョーシカ・システムと言われる核廃棄物を管理する最終保管施設をシステム化し、商業運用に道筋を開いた。 マトリョーシカとはロシアの組込み人形だが、その人形に似た複数層の構造を持つ大型容器に使用済み核燃料や核廃棄物を封印し、地下水脈に建設した地下プールに沈めて放射線の遮断と冷却を低コストで実現していた。廃炉システム開発機構の岩城理事長が、SF作家の千坂亮治のアイディアから作り上げたものだ。 日本政府は、使用済み核燃料の最終保管が可能になったことで、諸外国から使用済核燃料の保管を受託して外貨を獲得し、高齢化によって増加する社会保障費を賄った。 2059年以降、マトリョーシカ・システムはゼロ番街の地下に造られることになった。マトリョーシカ・システムとゼロ番街をセットにすることで、開発コストの削減とゼロ番街の維持費用の増加に対する国民の批判をかわすことを目的としていた。
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