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それから、午後も、次の日、その次の日も自殺者に遭遇し続け、
「あなた何者?」
と宮野に尋ねられながら、一日、また一日と日を過ごし、渡辺は八幡村での生活に慣れて行った。
基本的に遭遇した自殺者は、二人が走り寄ると慌てて逃げて行った。渡辺にはいまいち理解できないことだったが、自殺を後ろめたく思っているのでは、という話でまとまった。
時には遺体を見つけることもあったが、村長にも自殺者の人数が大幅に減ったと喜ばれた。
「今日も自殺日和だなぁ」
「そんなこと言ってないで、ほら浩平、早く行くわよ」
心地よい日差しが射す花曇りの中、渡辺は能天気な声をあげた。先行する宮野がそれをとがめるものの、その顔はどこか晴れ晴れとしていた。
こうして今年も、桜の季節になると二人は花霞樹海の桜の園をめぐるのだった。
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