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十五号室の中は、思ってたよりは幾ばくかキレイだった。
床は畳ではなくフローリングで、掃除がされていないのか、靴跡や埃が溜まっていた。でも、寝具は見た目はきれいだった。
寝台といった感じのベッドで、簡素な台に、柔らかめの布団が敷いてある。人が二人は寝られそうな大きさだけど、一つしかない。
(あれ? もしかして、一緒に寝るの?)
「大丈夫ですよ。私は床で寝ますから」
私の不安を察したのか、風間さんはそう言って笑んだ。
「いや、いえ、良いですよ、そんな! 風間さんだって疲れてるのに! 私が床で寝ます! お金だって出してもらってるんだし!」
私が慌てて言うと、風間さんは驚いたような顔をしていた。
さすがにこれで汚い床に寝てもらうとか、罪悪感が半端ないわ。
「わかりました。じゃあ、一緒に寝ましょうか」
「え、一緒!?」
(いやぁ……。一緒はさすがに……)
でも、風間さんは私にまったく気がないわけだし。毛利さんならともかく、風間さんが私みたいな子供に手を出すわけない。それに、断ったら私が風間さんに気があると思われるかも知れない。
(そうなったら、魔王を狙われるかも……)
なんだか、胸が苦しい。風間さんに私自身を見てもらえないのが、なんだかすごく哀しい。
私はかぶりを振った。こんな感情はとっとと捨て去らなきゃ。
「じゃあ、そうしましょうか?」
「そうですね。ありがとうございます。じゃあ、ご飯でも食べに行きますか?」
「はい」
笑んだ私の頬が硬かったのは、気のせいだ。きっと。
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