さよならアルペジオ

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何でも金で手に入る。 人より少し稼いでいる奴はみんなそう思ってしまう。 高級マンションに住み、外車に乗って、仕事の出来る男と称され、美味い飯と酒、それにいい女…。 「いるの…。いい女…」 突然、後部座席からそんな声がした。 俺はルームミラーで後部座席を見た。 ヘッドレストに手を掛けて、下着姿の櫻井未空が身を乗り出していた。 「な、なんだ…」 俺は驚いてブレーキを踏んだ。 「何やってんだお前…」 急ブレーキでシートに深く沈んだ未空は打ち付けた頭を摩りながら、 「危ないわね…」 と、文句を言った。 「とりあえず走りながら話するから…」 そう言われて俺は、納得のいかないまま駐車場を出た。
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