かつての同僚

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かつての同僚

人は、誰もが何かを失って…生きている。 自由? 愛? 夢? 希望?  過去? それとも…未来…? 何をセレクトするのかは、人それぞれ。 …独りになってから、すべて知った。 上條紫織は、見慣れぬ部屋で起き上がり。 自分が何も纏っていないことに頭を抱えて落ち込んだ。 隣には男が背を向けて寝ている。 …またやった。 理由はわかっている。 ここ2年不眠症な上にストレスがたまっているから。 ストレスとは、うまく向き合わなきゃいけない。 わかっているのについ頑張りすぎる…。 頑張っていないとよけいなことに足を取られる。 元々地盤が緩い自分の何かが、崩れ落ちてしまいそうで…。 不安で怖くて…独りの夜はとても長い…。 この2年。 ろくに眠れたことなどあっただろうか…。 「…紫織?」 着替えていた背中に、起きたらしい男の声。 わたしは、驚いて男を見る。 「…ヒナ…」 昨夜一夜を共にした相手は… 2年前辞めた会社の同僚だった。 「…おはよ」 寝ぼけ眼をこすって、 ぼんやりとわたしを見てる、 あどけない顔は、歳よりも幼く見え。 同じ25歳のはずなのに… 仕事をばりばりこなす彼からは、 思い浮かべられない、 無邪気な一面…。 だんだん昨日のことが思い出せてきた。
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