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「時田さん。ちょっと肉じゃが作りすぎてしまって。食べてくれませんか?」
三島が鍋をもって時田に上目遣いで話しかけている。本当は時田に差し入れするために余分に作ったことも知らず時田は嬉しそうに鍋を受け取る。
「いやまじでありがと!!おれ今月ピンチでさ、ほんと救いの女神だよ~」
「大袈裟すぎです」
ふふふと三島が笑うと時田が「あ、そうだ家で食べていかね?」と誘う。三島は恥ずかしそうに顔を赤らめると顔を下に向けた。
「うちいま実家から送られてきた米だけはあるんだよね。どう?」
意を決したように三島が顔を上げると「……はい」と甘ったるい媚びた声で返事をした。その顔は、これから起きることであろうことで期待に満ちていた。
しかし三島が期待したようなことは起こらず、時田は三島と飯だけを食べて部屋に返した。三島は名残惜しそうにちらちらと時田を見ていたが、諦めて部屋に帰っていった。
「さあて、本読むかなあ」
そういって借りた本を広げるが、ものの数分もしないうちに寝息を立て始めた。源氏物語の現代語訳は、時田には合わなかったらしい。寝息を立てる時田の寝顔は、可愛らしかった。
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