おとなりさん。

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「時田さん……相談にのってくれませんか」  三島が沈痛な面持ちで時田に話しかけている。お昼を過ぎたカフェテリアは人がほとんどおらず、時田と三島二人でテーブルに座っていた。その怯えが混じった声に、時田は驚く。 「何かあったの?おれが力になるよ」  真剣な面持ちで時田が身を乗り出すと三島が非常事態だというのに顔を赤らめ「……ありがとうございます」と言った。三島は鞄から写真を取り出すと、テーブルの上に乗せる。 「ん?なにこれ。ただの部屋に見えるけど」  三島はふるふると首を振ると「……私の部屋なんです」とか細い声で言った。 「一週間前くらいから、私の写真がポストに投函されるようになったんです。最初は大学構内で、その次はアルバイト先の私の写真が。気味が悪かったんですけど写真に撮られてるだけで害はなかったのでほっといていたんです。そしたら昨日、この写真が…‥‥」 「……つまり部屋の中に侵入されて撮られたってこと?」  こくんと三島が頷く。勝手に自分の写真を撮られ送られてくるだけで気味が悪いものなのに三島の胆力は強かった。だが流石に部屋に侵入されたというと話は違う。時田は憤懣やるせないという表情で写真を手にしていた。 「こんなのストーカーだよ。なにか心当たりとかある?」  また三島がふるふると首を横に振る。時田はうーんと唸ると「警察にはいった?」と至極まともなことを言った。 「いえ……あまり大事にはしたくないので……」  三島には後ろ暗いところがあった。小遣い稼ぎでいわゆるパパ活をやっていたのだ。その中の一人がストーカーをしているのではないかという懸念があるのだろう。しかしそれを時田には言うことはできない。時田には清純な、可愛い後輩だと思われたいのだ。 「……そうか。でもおれは君の味方だから。なにかあったら頼ってね。おれも警戒しとくよ」  時田は三島の手を握って力強く宣言した。三島はこれがチャンスだと言わんばかりに目を輝かせながら「お願いします」と時田の手を握り返した。
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