おとなりさん。

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「ただいまあっと」  夜十一時半。三島は部屋の扉を開けた。ストーカー被害に合っているというのに性懲りもなくまた出会い系サイトでパパ活をしており、今日も数万円の大金を手にして帰ってきた。ガチャンと扉を閉め玄関の電気をつけたとき、三島は違和感に気付いた。玄関に置かれていたダンボール箱に目を向けると、三島はワナワナと体を震わせた。すぐに時田に電話を掛けようとするが、今朝から時田はサークルの合宿で数日いない。ゴクリと生唾を飲み込み、三島は目の前にあるダンボール箱を凝視している。好奇心に勝てなかったのだろう、三島はゆっくりとガムテープを剥がし、ダンボール箱を開けた。 「ひィィィィ!!!!!」  三島はダンボール箱を蹴飛ばし、中の写真をぶちまける。三島は見てしまった。歓楽街で腕を組み若い男とデートしている自分の写真を。カラオケで脂ぎった男とキスしている自分の写真を。ラブホテルで中年の男と寝ている自分の写真を。ダンボール箱一杯の写真が、廊下に散らばっていく。 「な、なにこれなんでこんな写真が……」  大量の写真の中に一枚だけ白い紙がある。それを三島は見つけ、おそるおそるそれを手に取った。そこには新聞紙のコラージュで『オマエヲミテイル』と文字が書かれている。 「え……?」  その呟きと同時に、ひらひらと天井から一枚の写真が舞い落ちる。その写真は三島の目の前にゆっくりと落ちていった。そこには、呆然と脅迫文を見ている三島の姿が写っているはずだ。 「い、いやああああああ!!!!」  三島の絶叫がアパート中の部屋に響いた。
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