あなたを好きでいたいよ

14/58
前へ
/58ページ
次へ
「日生くん! 日生くん、いる?」 「あぁ、いるよ。えっと君は、人事の…」 確か紫織の同郷の同期で長谷川さんだったか。 「ねぇ、紫織が会社辞めるって聞いてる?」 「え? 知らないな。本当かい?」 「だったら追いかけて! 様子が変なの」 「なんだって!?」 時刻は、夕方。 もうすぐ定時になる頃だった。 「すみません! ちょっと出ます」 「あ? おい、日生… どうした!」 課長の声を背に受けて僕は、走った。 会社を辞める? 紫織が? 彼女の営業成績が下がって悪くなっているのは、知ってた。 体を壊して休職していることも。 だけど彼女なら、戻ってくると信じてた。 こんな、いきなり突然いなくなるなんて…。 僕は思ってもなかったんだ。 「紫織! どこだ! 紫織!!」 夕方の会社員が帰り始める時間。 人並みをかきわけながら、僕は彼女を捜した。 そのままの足で彼女のマンションに行き、 部屋のドアを開けると、そこはもう片づけられて、 何もない部屋になっていた。 「…ウソだろ」 紫織…!!
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加