あなたを好きでいたいよ

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紫織と再会して数時間後。 カフェで近況を話し合って今日のところは、終了。 スマートに彼女を家まで送って帰宅。 という予定のはずが。 一緒にいると楽しくて、つい家で飲もうって。 二人で僕の部屋に来てしまった。 コンビニで仕入れたビールやワインを飲みながら、 話しは、尽きなかったけど、 紫織がワインを倒したのをキッカケに、 なんだか妖しい雰囲気になってきて。 誓ってそんなつもりはぜんぜん、全くなかったのに。 (誰に言い訳してるんだ。僕は…) どうしようもなくたまらなくなってきて、 キスくらいいいかな? いやいや寝てる相手に何を…。 そんな葛藤をしていたら唇が動いた。 「…昌行…」 ………。 以前寮の自分のベッドへ運んだ時も、 同じことを呟いてた。 テーブルで一粒ダイヤのペンダントが光ったのを見て、 無言のまま、背を向けて僕は彼女の隣で眠った。 翌朝服を着る音に目を覚ますと、 昨日とは変わって、素っ気ない態度の紫織がいた。 「紫織」 「なに」 「また会いたいんだけど?」 僕の言葉に困ったように目を伏せ、小さな声で言われた。 「……わたしは、会いたくない」 「そうか、ごめん…」 「ヒナのせいじゃないよ。じゃあ…」 「あ、ちょ…待って。紫織!」 忘れ物と言う前に出て行ってしまった。 君にとっては僕の存在も、… このペンダントも、… 幸せも不幸も思い出させるものだろうな。 だけどね…。 僕はもう『傍観者』じゃないよ。 君を見ていただけのあの頃の、僕じゃない。 今度は、僕自身が。 僕のために君のそばにいたい。 僕の気持ちは、きっと。 君を困らせてしまうけど…。
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