あなたを好きでいたいよ

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ぎこちない雰囲気になったままタクシーに乗り、 二人の間に少しだけ距離ができる。 僕は、言葉少なに窓の外を見つめる素振りをしながら 紫織の手をそっと握った。 紫織は、僕の手を振り払わなかった。 あの夜キスしたい衝動を振り切ったけど…。 自惚れていいんだろうか。 期待してしまうよ? 少しは僕を男として見てくれるって。 思っていいの? 「部屋まで送ってくれてありがと」 「いや僕が誘ったし」 何となく別れがたくなった。 もう少し一緒にいたい…。 「ヒナ?」 なかなか帰ると言わない僕を紫織が見上げてくる。 彼女の瞳に映る自分の姿は、揺れていた。 やけにゆっくり話している自分がいた。 「キス……してもいい?」 「え?」 何が何だかわからないって表情…。 両手で耳の裏から首をそっと包み込み、 重ねるだけのキスをした。 突然のことに僕の腰辺りに紫織の手がある。 一度唇を離して耳元でおやすみと囁いた。 少しでも彼女に愛しさが伝わるように…。
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