あなたを好きでいたいよ

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弱音になるとわかっているから言えないでいると、 ヒナの方からさらりと切り出された。 「紫織、しばらく会わない間にまた痩せたね…。 言いたくないなら無理に聞かないけど、何かあった?」 「………」 「あ、もしかして僕が君にキスしたから?」 「違うわ」 これ以上話したら泣きそう。 だけど言葉は、止められない。 ヒナの、彼の前では…つよがれない。 「…眠れないの…」 「え?」 「不眠症って言ってたでしょ。ここしばらくは薬もなしに、 眠れるようになってきていたのに…ぶり返してきて…」 「そうだったのか…」 そっと肩を胸に抱きよせられるともうだめだった。 「…やめて…」 「紫織?」 「お願い…。わたしに優しくなんてしないで…」 望んでも仕方がない事は、考えないようにしてきた。 人生は、きっとどうにもならないことばかりだって。 あきらめて生きていた2年だったのに…。 なのに、それなのに優しくされたら。 どうすればいいかわからない。 踏み出したくても踏み出した先に見えるものが怖くて、 手を伸ばしたいのに怖くて仕方がないのよ。 「もう…会わない方が、いいわ」
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