あなたを好きでいたいよ

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嫌なら逃げていいよ? そんな事が言えたのは、一線を越えるまでのこと。 肌を重ねてしまえばもう止められない…。 家に着いてドアを閉めた途端、待ちきれなかったように口づけて。 慌ただしく服を脱ぎ捨てて君に触れる。 「紫織…。紫織…」 何度も名前を呼んで呼ばれて、 貪るように口づけて、触って触れられて、 抱いて抱きしめられて…。 「…ぁッ、…ヒ、ナ…あぁ、あッ、…あッ、ンあッ…」 「紫織…。紫織…ッ…」 わかっていたんだ。 一線を越えたら戻れなくなるのは、僕だって。 二度とこの手が離せなくなることも…。 不安になる…。 抱いているのに…今、腕の中にいるのに…。 キスに応えて回された腕は、背中を抱いているのに…。 今、抱き合っていることも夢のような気がして。 だからもっと君を知りたくて、 君を感じたくて、確かめたくて…。 求めてしまう…。 「紫織、ぎゅってして」 「な、んで?」 緩やかな動きを止めて向かい合って座ったまま、 抱き合っている彼女が僕を見つめてくる。 「いく」 「いって」 「やだ」 「え?」 「…… 君と、いきたい…」 「ッ…。なんて表情(かお)…す、…るの…」 抱きつかれた反動で繋がっているところが締まった。 「ちょ、紫織…ダメだよ。そんな締めたら…」 「触って…」 「え?」 どくりと欲がかき立てられる。 「もっと触ってよぉ…」 「どこ?」 「…ぜ、んぶ…。…やだ、どうしよう…」 「紫織? 泣いてるの?」 しがみついてくる背中を撫でながら聞く。 「ごめん…。ごめん、ヒナ…。自分でもよくわかんない…。 わかんないけど… ヒナがほしい…。もっと…って…あふれてくる…」 「…。泣かないで、紫織…。わかったよ」 ソファに座ったまま繋がっていた体を横たえ、 もっと感じ合うために彼女の片足を上げ、深く繋がる。 濡れそぼった蕾は、どんな動きをしようとも、 僕を捕えて離さそうとはしない。
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