あなたを好きでいたいよ

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同僚で高校からの彼氏昌行に、今日からルームメイトだと紹介され、 先ほどから一向に目を合わそうとしない彼にわたしは、謝っていた。 「ごめんね。日生くん、本当にごめんね!」 「そんなに謝らなくても、気にしてないですから…」 顔の前で手を合わせ、彼の様子を伺うけど、 困った顔でそう繰り返すばかり。 「だって…!」 まだ何か言い募ろうとするわたしを遮って、 むき出しの肩にふわりとシャツがかけられた。 「いくら夏で暑くても、冷房で体を冷やすのはよくないですよ」 きちんと襟元を合わせるとやっと目を合わせてくれて、 その時は、彼の行動の意味がわからなくて、 ぽかんと彼を見上げてしまった。 昌行は、何が面白いのか笑っていて、 わたしの視線に気づくと彼に向き直った。 「改めて自己紹介しよう。俺は、営業二課の長野昌行。 君と一緒にこの部屋を使うルームメイトだ。よろしくな」 「こちらこそよろしくお願いします」 「そっちは、高校からの俺の彼女で同じく営業二課の上條紫織」 「よろしくね。日生くん」 「君の聞きたいことは、わかる。男子寮になぜ女がいて、俺の部屋にいるかだろ?」 見透かしたかのように顔の前に指を立て、昌行が得意げな顔を作る。 そして彼の肩に手をかけ、ニヤニヤして言う。 「なぁ、そこのカーテン開けてみた?」 「開けました」 「どうよ?」 「どうって…?」 「開けたら、向かいは女子寮だっただろ?」 「えぇ、すごく近いんですね。ベランダを乗り越えて…行き来できそうなくらい」 「できるのよ」 「は?」 「いやマジで」
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