あなたを好きでいたいよ

46/58
前へ
/58ページ
次へ
一般の恋人達のように、僕らに式を挙げる時間はなかった。 僕は、男だから式にこだわりもないけど。 紫織は、女の子だし、ウェディングドレスが着たいはずで。 着せてあげたいと思った。 (もちろんドレス姿を僕が見たいのもある) 何か方法はないかネットや資料で調べてみたけど、 僕と二人でいられる時間を大事にしたいと紫織から言われ断念した。 とはいえ・・・けじめは、つけたい。 式が無理でも、せめて双方の両親に結婚の挨拶をした上で、 顔合わせと結納ぐらいなら・・・と考えていた。 僕の両親は、いつでも挨拶においでと喜んでくれたけど、 紫織のご両親からの連絡は、ないままだった。 「ごめんね。ハガキ出したけど、連絡なくて・・・実家に電話しても出てくれないの」 「君のせいじゃないさ」 寂しそうに笑う紫織を励まして、 先に僕の両親に会ってもらうことになったが。 罵り合い階段の踊り場から、 転がり落ちてきた妹(若菜)と弟に、※階段落ち 隣にいる紫織は、唖然としている。 「・・・・・・」 派手な音に母と妹(萌)が別々に駆けつけ、 「まあ! 若ちゃん、悟くん、なんですか。お行儀の悪い!」 「お、俺じゃねーよ! 若姉が押すからさー」 「わたしじゃない!」 「やめなさい! お客さんの前ですよ」 あぁ・・・こんな大事な日にと頭を抱える僕と母の前に萌が滑り込んできた。 「ごめん! 二人は、あたしが連れてくから。紫織さん、こんにちは。ゆっくりして行ってね」 紫織と一度会っている萌が短く彼女に挨拶し、二人を立ち上がらせる。 「え? えっえっ?」 二人の存在を知らない紫織が萌と若菜を交互に見て軽く混乱している。 「ちょ、待て! 萌、会ったことあるのか?」 「ずっりー! 萌ちゃんだけなんだよ!」 「いいから立って。邪魔しないの! ほら二階行くよ」 口々にぎゃあぎゃあ言いながら萌に従って二人が階段を上がっていく。 唖然としたままだった紫織に母が話しかける。 「ごめんなさいねぇ。見苦しい所をお見せして・・・克の母です」 「は、初めまして。上條紫織と申します」 「どうぞ上がって?」 「は、はい・・・」 結婚の挨拶なんて・・・と実家に来るまでずいぶん紫織は、緊張していたけど。 下の二人の登場で緊張が抜けたのか、両親と和やかに話していた。 兄妹構成は、詳しく話していなかったから、 僕には、妹が一人いるだけだと思っていたらしい。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加