あなたを好きでいたいよ

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兄妹の仲がいいことは、親にも嬉しい事なのか母が嬉しそうに話す。 「驚いたでしょ? いつまで経っても、お兄ちゃんが好きで。 紫織さんが来るからってそわそわしてたのよ?」 「そう・・・だったんですか」 「・・・・・・階段の踊り場での会話が、玄関まで丸聞こえだったよ」 「まぁ、あの子たち・・・失礼なこと言ってなかったでしょうね」 「想像以上に美人だって」 「え?」 「君が美人だって」 「美人?」 『あんな美人にうちの兄貴でいいのか?』 『若姉、兄貴・・・(鬱陶しがられて)フラれたりしないよな!?』 ・・・この辺りは、黙っておくか。 両親と話していたのは、どれくらいだったか印象はよかったようだ。 ほとんど話していたのは、母で時々父が挟む程度だったけど、 帰りには、両親が玄関まで出てきてよろしくお願いしますと言ってくれた。 紫織は、はいと短く返事し僕らは、駅へと向かう。 玄関を出ると外は、夕闇に包まれていた。 兄さんと声がし、二階を見ると三人が窓から手を振っている。 「一緒に手を振ってあげてくれる?」 「え?」 「三人が手を振ってる」 「……」 手を振り返しながら紫織が呟く。 「……仲がいいのね。びっくりしちゃった」 「そうかい?」 「ご両親もいい人だし、なんだか・・・気後れがしたわ」 「どうして?」 「・・・わたしの家族とは、違うから」 行きましょうと歩き出す彼女の手を無意識に引いていた。 不思議そうな顔で振り返る。 「どうしたの? 不安になった?」 僕が切り出すと紫織の瞳に躊躇いが走った。 そして質問で返された。 「本当に・・・わたし(が妻)でいいの?」 紫織とつきあってから気づいたことがある。 何か言いたげな瞳は、泣き出す一歩前の顔。 僕は、それを見逃してはならないのだと。
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