あなたを好きでいたいよ

5/58
前へ
/58ページ
次へ
「待って下さい。乗り越えるって危ないでしょう? ここ3階ですよ!?」 驚く彼に昌行が振り返った。 「木に登るような高さだよなぁ? 紫織」 「うん。何でもないよ? こんなの」 「何でもって…女の子なんですから、危険な真似は…」 「大丈夫だって。俺らの育ったのって山の中の超田舎でよ? こいつ、男と一緒になって木に登ったり今もすっげーお転婆なわけ」 「む、昔は、そうかもしれませんが。今も同じというのは…」 「えー。大丈夫だよ~」 「いけません! 落っこちて怪我でもしたらどうするんです!!」 「「せんせーみたいだな・ねー」」 「一応教員の資格は、持って…じゃなくてですね…」 「じゃ紫織、お前こっち来るときにメールか電話で知らせろよ」 「えー。面倒だよー」 「知らせてきたら、王子様がベランダで手を取ってくれるかもしれねえぞ?」 「え、なに昌行がスタンバイしてくれるの?」 「アホ。俺がするかよ」 「じゃあ誰が…」 二人のやり取りを聞いていた彼を昌行と見る。 「…どうして僕を見るんです」 「危ないって言ったの、日生くんじゃん」 「言いました、言いましたけど…」 「別にいつもじゃなくていいぜ? 俺がいる時は、俺が行きゃいいだろ?」 「向かいの部屋の女の子は、いいんですか? ご迷惑じゃ…」 「だからそれが紫織なんだって」 「あぁ、そういう…(こと)…」 「それとさ」 「まだあるんですか?」 「こいつがこっち来てるのは、内緒な? 規則違反だから」 「はい。…わかりました」 「え? ヒナ、わたし達と同じ歳なの?」 「老けてるって言われないか?」 「…放っておいてくれ」 初めて会った時から、やんちゃなわたしと昌行に。 落ち着いた大人のヒナがいて…。 ヒナって呼び始めたのは、いつからだったのかな。 後日笑っていた理由を訊ねてみると昌行は、 また笑いながら教えてくれた。 「体が冷えるってのは、ヒナの優しさだ」 「優しさ? なんの?」 「そりゃお前の恰好が不用心すぎて目に余ってだろ」 「えー!」 早く言ってよぉ!
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

78人が本棚に入れています
本棚に追加